外貨建て資産等の確定申告(個人)のポイント(事業所得除く)
個人の確定申告にあたり、保有する外貨建て資産の取り扱いは下記のとおり。
①未実現利益の認識は不要(原則、外貨建て資産の期末換算による為替差損益の認識は不要)
②計算方法
・円換算レート
原則、取引日のTTM(Telegraphic Transfer Middle rate。対顧客電信仲値相場。TTSとTTBの仲値)
ただし、売上・資産はTTB(対顧客直物電信買相場。Telegraphic Transfer Selling rate)、仕入・経費、負債はTTS(対顧客直物電信売相場。 Telegraphic Transfer Buying rate )によることができる(継続適用)
・譲渡原価
原則、移動平均法
・所得の種類
為替差損益は原則、雑所得で総合課税の対象(超過累進税率)
③外貨預金
・異なる通貨に転換したときは為替差損益を認識(日本円だけでなく、外貨から外貨も含む)
※外貨建て定期預金が満期になった場合、同一通貨で継続して、金融機関(他の金融機関含む)に預け入れした場合は為替差損益の認識不要
・外貨預金で資産(ex.外貨建てMMF)を購入した場合、為替差損益を認識。(購入時の為替レートでの邦貨換算額を取得原価とする)
・原則、年間20万円以下であれば確定申告は不要(給与所得、退職所得以外の所得の合計額)
④外貨建て株式等
・譲渡時に為替差損益は認識されない。譲渡損益に含めて認識される。
・譲渡所得はTTMでなく、取得時は約定日のTTS、譲渡時は約定日のTTBで計算
⑤外貨建て債券
・償還時に為替差損益は認識されない。利付債の償還差益は申告分離課税(譲渡所得)で、為替差損益を含むため。
⑥外貨建て生命保険
・解約返戻金は、契約者の一時所得
・保険料負担者と契約者が一致しな場合は、契約者に対して贈与税
・解約損失は他の所得と通算できない
⑦国外で所有する土地、建物
・譲渡時の為替の影響は、為替差損益とせずに、譲渡所得に含まれる。
・取得価額:取得日※のTTM
・譲渡対価:売却日※のTTM
※取得日、売却日は、資産の引き渡し日または売買契約日
・国外中古建物に減価償却費で損失が発生した場合については、損益通算に一定の制限あり(節税スキームへの対応)
(参考)
暗号資産(Cryptocurrency)
・売却したときに、売却価額で売却損益(雑所得)を認識する。
・決済に利用したときに、決済価額で譲渡損益(雑所得)を認識する。
・他の暗号資産に交換したときに、取得した暗号資産で譲渡損益(雑所得)を認識する。
※暗号資産で損失が生じた場合は、雑所得となる為替差益と通算可能(給与所得等との通算不可)
FX取引
・利益が出た場合は、源泉分離課税
・損失が出た場合、他の先物取引(FX、商品、有価証券など)の利益と通算可能
・確定申告で3年間の損失の繰越可能
※上記の取扱いは国内取引所取引等を対象としており、海外証券会社等との国外取引では雑所得として総合課税となる。